2018年5月13日日曜日

挑発する存在








聞いていなかった、と思う話が多いこの頃。末娘バッタにしてみれば、ママにはいつだってちゃんと話をしているとのこと。私がうっかりして、話を半分にしか聞いていないのだろうか。

この金曜の夜の話も聞いていなかった。一人の友達の誕生日を祝うために、もう一人の友達と夕方からパリに行って、帰りが遅くなるので皆で我が家に泊って、翌日お昼前に解散。試験や研究発表会、コンサート、色んなイベントが目白押しでとにかく忙しいと言っていたのに。誕生日だから、特別らしい。確か、プレゼントを別の4人ぐらいの友達と贈るのではなかったか。それはそれで、今回のイベントとは違うらしい。

これまでにも、一人の友達の誕生日を、別のシチュエーションで何度も祝っていることには、気づいていた。祝う友達の顔ぶれ、場所、内容がそれぞれ違う。最近はそんなものなのだろうか。

あいまいな返事をしていたが、夜になって、実はパリに出掛ける案はなくなり、よって、誰も泊りに来ないことになったと言われる。そうなると変なもので、娘が不憫に思われてしまう。親御さんにしてみれば、二週間ものバカンスが漸く明けて勉強モードになったと思えば、イベント尽くし、飛び石連休ありで、子供たちの学習態度が心配なのだろう。そりゃあそうだ。それでも、友達のためにアイディアを練って企画した末娘バッタが淋しそうな様子に、優しい言葉を掛けてしまう。残念ね、仕方ないわよ、次回は皆泊ってくれるといいよね、などなど。

ところが、その夜になって、二人とも親の承認を得られたので、イベントを決行すると言う。軽食を持ち寄って、セーヌの川沿いでピクニックをするらしい。寒かったら、家で皆でピザでも作って食べることを提案してみたが、16歳の少女たちは雨が降ってもパリに行くだろうことは容易に想像がついた。

時計の針が既に翌日の時を刻み始めた頃、SMSを送る。「もう帰ってこないと駄目だよ。家に鍵をかけちゃうぞ。」すぐに返事が来る。「今電車の中。もうすぐ帰ります。気を付けるから大丈夫だよ。」

8月にはブルターニュ地方のパピーの故郷である小さな島で、夜遅くまで友達と自転車で遊び回っていることは知っていたが、ここは、あの平穏な誰もが誰をも知っている島ではない。この間だって、自転車に乗っていて、知らない男性にクラクションを鳴らされたと言っていたではないか!挑発するつもりは本人たちには毛頭なくとも、存在自体が挑発している年齢層にあることを全く自覚していない。末娘バッタに何かあったら、というよりは、そのお友達に何かあったら、との心配の方が募ってしまう。

「知りません。」
そう書き送ったものの、何事もないことを願うというよりは、ありとあらゆる最悪の事態を考えてしまい、心配で目がぎらぎらとしてしまう。

随分と時間が経ったようにも思えたが、実際はそうでもなかったのかもしれない。扉の開く音がして、家の空気が動いた。友達も遠慮してか、その後の音がない。こんな時間なのだから、恐縮して当然だろう。ひょっとしたら、末娘バッタから私のメッセージを聞かされ、怒られては敵わないと、皆それぞれ家に帰ったのだろうか。そう思いつつも安心して寝てしまう。

翌朝、玄関には丁寧に靴が並べられていて、友達が泊っていることが分かる。朝食にパンケーキでも焼こうか。いや、ケーキにしよう。ふんわりと優しくて、中がしっとりとしているレモンケーキがいい。レモンの代わりに燦燦と降り注ぐ太陽を一身に浴びて育ったオレンジを入れよう。元気な16歳のお嬢さんたちにはぴったりではないか。

ふと、そのうちの一人が17歳になったことを思い出す。甘い香りがキッチンに溢れてくる。




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2018年5月10日木曜日

持つべきものは、、、








今朝は寝覚めが悪かった。いや、今だからそう思えるのか。
せっかくの休日なのに、目覚ましもつけていないのに、昨日は夜更かしさえしたのに、何かに急かされて起きてしまう。外はぼんやり明るくなっているが、どうやら曇り空。

腹部に普通ではない痒みを覚えて、これまた何故か患部を見る。いつもなら、ただ掻きむしるだけなのに。そして、そこに黒い粒のような突起を見つける。初めての体験なのに、これはティックだと本能が告げる。

先月、森のゴミ拾いボランティアをして、大きなゴミ袋2つに、スーツケース、壊れた車のドアなど、信じられない森のゴミを拾って、一人では持ち運びきれずに応援車を呼んだというツワモノの末娘バッタが、その時、同時にティックも拾っていた。

以前長女バッタが矢張りティックに噛まれ、抗生物質にもお世話になったこともあり、処置を間違えると大変なことになることは知識としてあったことが幸いしてか、末娘バッタは冷静に友人たちにティック除去道具を持っていないか聞き回り、すぐに道具をゲット。頭が取れたり、足が身体に残ることになり、病気になっても自分の責任にできるからと、自分でティックを除去。その時は、脚も頭も胴体もすべて揃った元気なティックを足の太ももから抜き取ることに成功していた。

未だ安眠を貪っている末娘バッタを叩き起こす。ママの一大事だぞ、と。すぐには起きない末娘バッタだったが、漸くむっくりと起き、痒い突起を目にして一言、「ティック」。

ああ、嗚呼!虫が自分の身体に入り込み、血液を吸っているなんて考えただけで卒倒してしまう。

しかし、これが初めてのことなのに、どうしてすぐにティックだと分かったのか。本能とはすごいものだと、我ながら感心。いや、それどころではない。猫を飼っている近所の知り合いにSMSでSOS。どうやら、寝ているところを起こしてしまったらしいが、半時間後にはティック除去の道具を借りることができ、経験豊かな末娘バッタに除去してもらう。

持つべきものは、どんなことにも動じない我が子かな。ありがたし。
二日前に森に散策に行った時に見初められたのだろうか。もちろん、持つべきものは、猫を飼っている近所の友人!いやはや。薬局でちゃんとティック除去道具なるものを購入し、我が家に常備しておかねば。ちなみに、ティックとは、吸血鬼、マダニのこと。





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2018年5月8日火曜日

届けたい思い








通りを曲がる前から、甘く芳しい香りが風に運ばれてきて、思わず歩みを緩めてしまう。
純白のリラの花房の重みで細い枝がしなっている。見上げると青い空。

この香りを届けたくて、袋に白、薄紫、赤紫の花房を一杯に入れ、何人もの友人宅に押しかけて行ったことを思い出す。思い込みが激しく、思い込んだら突っ走る性格。あの時の情熱はどこから溢れてきたのだろうか。もちろん、皆喜んでくれたが、大ぶりな枝ごとのダイナミックな花束に面食らった人もいたろう。

そんな友人たちの多くは、日本、北欧、パリ、南仏にとそれぞれに引っ越してしまっていた。それでも、庭に出て、見事な花房をつける枝を斬り落とし、花束を作る。ご近所に一人で住む85歳になるマダムに届けようと思い、末娘バッタにその旨声を掛けると、マダムの家にはそれは見事なリラの木があると言われてしまう。我が家のドアを開け、お向かいにあるマダムの庭に目をやると、確かにそこには色とりどりのリラが初夏の風に光っている。それもそうかと、我が家の玄関に飾ることにしてしまう。それが10日前の土曜日のこと。

その後末娘バッタから、マダムが体調が悪くて寝込んでいたことを聞かされる。高熱で意識が朦朧とする日々が続いたらしい。「ママがあの時、リラの花束を持って行ってあげたら、と思うと!」末娘の心配そうな顔。学校の帰りに顔色のすぐれないマダムに通りで会って、話を聞いたらしい。

会いに行こうとの思いがあったなら、庭にリラが咲いていようと、我が家のリラの花束を持って行けばよかったと、後悔してしまう。

ちょっとしたお菓子を作って届けようか。キッチンにはちょうど色付いてきたバナナが2本。最近お気に入りのシナモンたっぷりのバナナケーキにしようかと卵を割り始めたところに、末娘バッタが登場。バナナのケーキなら、シフォンケーキ以外には考えられないと主張する。ママが作るケーキで一番好き、とまで言われてしまい、ここは喜んでシフォンケーキに変更。

ふっわふわのバナナシフォンケーキが焼き上がる。生クリームと苺で飾り、マダムの家の前に立つ。藤の花の香りに優しく包まれながら。





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2018年5月1日火曜日

幸せを祈って







毎年、
この時期には必ず純白の鈴を連ねるミュゲ。
庭の片隅にそっと可憐に、控え目に咲き誇っています。

フランスでは5月1日には、幸せを運ぶと言われるミュゲを大切な人に贈る習慣があり、メーデーの祝日ながら、通りの角で小さな即席マルシェがあちこちに出現します。


昨夜一晩じゅう降っていた雨を含み、柔らかに朝日を浴びて咲く我が家のミュゲを、皆様お一人お一人に贈ります。

幸せを祈りつつ。






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